ABSENCE 免震 2020年 ようやく定職につけた堅。 新たな職場は奇遇にも大人しい人たちが多く、寡黙で馬鹿真面目な堅に向いていた。 とはいえ、堅には、いきなり集中して働くことは難しかった。 長いあいだ心の傷に耐えた末の社会復帰で、体力も集中力も、まだ戻りきっていなかった。 勤務先から帰宅した堅は、すぐ布団に倒れ込み、苦痛の表情で眠り込んでいた。 頭が重く、体も動かせなくてだるいようであった。 千和が手際よく夕飯の準備をしたのち、堅の隣に寝転がって配偶者を抱きしめた。 首筋から鎖骨の暖かさと硬さを感じる。 堅「......すまん 千和...」 千和「謝んな」 千和「面倒だからよ」 兄を、いや夫をこうしてあやすなど、千和には高校生以来のごく瑣末な生活動作だ。 なんのことはない。 これにかこつけて相手に触れて甘えられるのだから。 そして、世界が壊れるような緊急事態のとき、今の堅のように千和が塞ぎ込んだとき... ...いつでも堅が動じることなく千和を抱きしめて支えていることに 堅本人は気づかないのだった。 2026年8月3日