BLOOD

葛城正親編

無題

2015年

延金英一には同年代の友人がいない。 あまりにも同じレイヤーで対話できる若者がいなかった。 雑談をする知人はいたが、年齢は相手の方がはるか上だったようだ。 そしてそのまま20才で私の師となり、25才で封印された。 35年もの月日が流れ、延金英一の知人はみな年老いるか、死んだ。 私もそのひとりだ。 なので延金英一は、数十年間他者が覚醒を待ちわびたことの意味、それを駆動させた感情の強度を知ることはないだろう。 常人は人生を積み重ねる中で記憶を更新し、関係性の重心を変え、疎遠になった者のことは忘れ去る。 延金英一にそのことを痛感する機会は訪れない。 もしあったとしても、何者かと深い関係を築き、その後10年以上疎遠になるという経験をしなければならない。 時代の異邦人となった延金英一には難しい。 私の事を理解するのは、私の死後だろう。 それでいい。 私には、人を壊さないように愛することが出来ない。
2026年5月1日