NULL 葛城正親編 死の超克 1993年 閲覧前の確認 本ページには精神的に負荷の高い描写が含まれます。ご自身の状態を考慮の上、閲覧をご判断ください。 指定:R18-G 含まれる描写 出産時の苦痛 精神侵襲 本文を読む 戻る 時子が懐妊したと報告を受けた正親は即座に行動を起こした。 時子が胸に秘める一抹の不安を察知したからだ。 出産だ。 正親はかつて自身が発狂したことを思い出していた。 もう33歳だ。5歳前後の記憶は常人なら薄れている。 だが葛城正親の中で、「人生が始まった」のは正気を取り戻した時からだ。 あの倉の中で自分は死んだのだ。 時子には耐えられん。 正親は自分に授けられた異能をフル活用した。 大学病院に足を運んだのだ。 関係する医療の知識とロジスティクスを把握した。 万が一の場合救急車が遅れて医療の手配が遅れてはならない。 産婦人科医の精神に侵入し知識を奪い取った。 正親には「専門家に任せる」という発想がない。 専門技能は経験年数に依存することを、度重なる「他人への侵入」で理解していたからだ。 だがこれだけでは話にならない。 なにもあてにならなかった。 女ではないからだ。 激痛を伴うことのない身体をもつ者の支えなど無意味だ。欺瞞だからだ。 激痛を乗り越えた者の激励も無意味だ。忘却するからだ。 この女を生き永らえさせ、我々の息子に「命」を与えるため、私は「死」をも超克する。 葛城正親は、時子に出産を乗り越えるための精神と身体の使い方を授けるため、激痛のピークに達した初産中の女性たちの精神に数十分間ダイブした。 その回数は十度に及んだ。 2026年4月2日